写真集 『PERSONA』 鬼海 弘雄
『PERSONA』は写真家の鬼海弘雄氏が、浅草は浅草寺の境内の壁をバックに30余年に渡り撮りつづけているポートレイトの集大成である。
たまたま通りかかったひとをよびとめて、ただ淡々と撮影していく。
そこには演出も何もないが、逆にこれだけ、そのひとそのものを写しこむことがいかに難しいかは、ちょっと人物を撮影したことがある者なら誰にでもわかることだ。
本書では、まず冒頭に1973~74年に浅草寺で撮影された写真が掲載され、そして165点におよぶ写真は、ほとんど1999~2003年に撮影されたものだが、なかには偶然に十数年ぶりに同じ場所で同じ人物に出会って撮影されたものもある。
そのほぼ同じ構図で撮られた同じ人物の写真は、語らずしてじつに多くのことを語っている。シンプルな構成のなかにすべてが宿っている。
この写真集は大判(A3変型)とかなり大きな体裁をとっているが、これはオリジナルプリントそのままの大きさを掲載するためで、さらにはトリプルトーン(モノクロ3色刷り)のクオリティでその奥行きのある繊細で深い調子を再現している。
鬼海 弘雄(きかい ひろお、1945年 – )
1945年 山形県寒河江市生まれ。法政大学文学部哲学科卒業。
山形県職員を辞して、トラック運転手、造船所工員、遠洋マグロ漁船乗組員など様々な職業を経て写真家に。1973年より浅草寺で人物写真を撮りはじめる。武蔵野美術大学映像科講師。
<主な受賞>
APA賞特選、日本写真協会新人賞、伊奈信男賞、「写真の会」賞
写真集「PERSONA」で第23回土門拳賞を受賞した。