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写真集「古寺巡礼」土門拳

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土門拳という人は本当に豪快な人で、
氏のエッセイ集を読んでも、
湯水のごとく酒を飲んだり
すぐに取っ組み合いの喧嘩を始めたりといった
エピソードには事欠きません。

その一方で
氏の残した写真はとっても繊細で
その気迫が細部に宿っているのを肌身に感じるような
独特の雰囲気を持っています。

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いちどコマーシャルカメラマンをしていた時に
秋田県酒田市の土門拳記念館に行ったことがありますが、
そこでは代表作である「古寺巡礼」が
常設展示されていて、
往年の大作を間近に見ることができます。

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この古寺巡礼は全5巻で完結しましたが、
取材は法隆寺に始まり、
三十三間堂の撮影をもって終了するまでに
約15年間を費やしました。

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完全主義の土門拳らしく
印刷には絵画や天然色写真の複製などに向く高級印刷、
8色の原色版印刷を採用しましたが、
原色版印刷の職人が絶えたのを理由に、
1995年版を最後に絶版となりました。

現在は全集の編集版が残るだけですが、
当時の熱い情熱を垣間見ることができます。


土門拳 古寺巡礼
土門拳 古寺巡礼

31. 3月 2015 by hasestudio
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写真集『東京窓景』中野正貴

東京窓景_中野正貴
窓はよく、額縁に例えられますが、
中野正貴さんの東京窓景は、
ある意味そうした寓話としての窓を
非常に洗練された形で具現化した、
非常に意欲的な作品と見ることが出来ます。

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そもそも中野正貴さんという人は
コマーシャルカメラマンとしてのキャリアを
積み上げて来られた方で、
広告写真特有の繊細さがフレームの各所に
見られるのは決して偶然ではありません。

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そもそも屋外と屋内では
光の量がまったく違うので、
普通に撮ると
外が真っ白or中が真っ暗になってしまします。

そういった意味でも、
室内への光の入り具合であるとか、
光線状態など相当緻密に撮影されたものであると
思われます。

熟練された技術だからこそ
それが”あっさり”と見えてしましますが、
その技術を見せないあたりが
一流の広告カメラマンの成せる技ではないでしょうか。


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『東京窓景』中野正貴

21. 3月 2015 by hasestudio
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畠山直哉さんの思い出

ライムワークス

はじめて「LIME WORKS」をみたのは
写真を始めたばかりの1997年ころ。

作者の畠山直哉さんは
この写真集で木村伊兵衛写真賞を受賞されて、
当時気鋭の写真家でした。

その畠山さんがワークショップをされるというので、
学生のころ1度参加させていただいたことがあります。

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集合場所は万博記念公園。
写真から受ける印象とは違って
革ジャンにシルバーアクセサリーを身につけた、
しかし個性やこだわりを強く感じさせられる
第一印象でした。

そのような風貌で、
大きなカメラを三脚につけて語るその様子は、
なんとなく不思議で
とても強烈に記憶に残っています。

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いま思い返せば
あのカメラはこの「LIME WORKS」を撮影した
8☓10のカメラだったのだな、と思うのですが、
当時はそんな知識もなく、
なんとなくその珍しい風貌のカメラを眺めていた記憶があります。

あれから20年近く。
畠山さんの作品は年々進化を遂げていますが、

”写真であることだけですでにすべてを語っている”
「LIME WORKS」に見る作品世界は
決して損なわれることなく、色褪せない
とてもすばらしいものであることに
改めて気付かされます。


ライム・ワークス LIME WORKS
ライム・ワークス LIME WORKS

07. 10月 2014 by hasestudio
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写真集『ダカフェ日記』森友治

ダカフェ
正直な話、
家族が撮った家族写真は最強だと思います。
カメラマンにしか撮れない写真もありますが、
家族にしか撮れない写真というものが
確実に存在します。

家族が撮った家族写真には
撮影者と被写体の、
または被写体同士の
親密な距離感があって、
その仕草すべてに意味があります。

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このダカフェ日記のすごいところは、
その個人的な親密さが
ある意味誰にでも感じることの出来るような距離感で
洗練され簡潔に提示されていることです。

そこはデザイナーが本業の
森友治さんの妙技とも言えますが、
それに加え、
毎回写真についている
短いキャプションが
なんともいえずいい味をだしています。


ダカフェ日記
ダカフェ日記 森友治

09. 9月 2014 by hasestudio
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