画集 『松井冬子一 MATSUI FUYUKO Ⅰ』松井冬子
松井冬子 一 MATSUI FUYUKO I (2008/02/21) 松井冬子 |
端正な顔立ちと凛とした和服姿が印象的な松井冬子。
茶道の先生をしている母の手ほどきで幼少から茶をたしなむ松井は、帰省すると今でも母とともに茶をたてるという。
そんな姿からは想像もつかないが、
松井のモティーフは、女性、雌に焦点を当て、主に幽霊、内臓、脳、筋肉といった人体、動物を題材にしたものである。浪人時代までは油絵を学んでいたが、日本画に転向。そのきっかけは京都神護寺が所蔵する神護寺三像のひとつ絹本着色伝源頼朝像(1951年に国宝に指定)の美しいぼかしの技法や繊細さに心酔してのこと。
松井の絵はおどろおどろしかったり、グロテスクであったりもするが、その日本画特有の表現がその対として静謐で客観的な中和として有効に作用している。その違和感なき中和は見るものに鎮静剤的なものを含んだ視点を与え、ひいてはそれは癒しのようなものであることに気付く。
この不思議な感覚は今まで味わったことのないもので、それは図らずも日本画の新しい側面を切り開いた松井の大きな功績であろうとぼくは思う。
松井 冬子(まつい ふゆこ、1974年1月20日 – )日本画家
1974年 静岡県森町出身。
1994年 女子美術大学短期大学部造形学科卒業
就職ののち4浪を経て、5度目の受験で東京藝術大学美術学部入学
2002年 東京藝術大学美術学部絵画科日本画専攻卒業
2007年 同大学大学院美術研究科博士後期課程美術専攻日本画研究領域修了。
博士論文タイトルは「知覚神経としての視覚によって覚醒される痛覚の不可避」
東京藝術大学日本画専攻としては初めての女性博士号取得となった